技術者も知っておくべきプレゼン資料作成術:社内研修会レポート

Introduction

こんにちは、データサイエンティストの善之です。
Insight Edgeの分析チームでは、有志が技術テーマについて1時間枠で講義し、チーム内でディスカッションを行う「技術研修会」を不定期に実施しています。
先日の研修会では、チーム内でのアンケート結果から最も希望が多かった「プレゼン資料作成術」をテーマに実施しましたので、そのレポートを行います。
技術とは少しテーマがズレますが、他の技術的テーマよりも希望が多く、他部署(開発チーム・管理部)からも参加希望があるなど、皆さん関心の高いテーマだと感じました。
今回は私の前職(コンサルティングファーム)での経験をもとに、プレゼン資料作成術についてお話ししました。

slackでのアンケート結果

目次

講義内容

まずはIntroductionとして「ありがちなスライド作成のプロセス」「あるべきスライド作成のプロセス」についてお話ししました。

私の経験上、ありがちなスライド作成のプロセスは
① 各スライドのチャートを作成
② 各スライドのメッセージを作成
③ 見やすいデザインに整える
④ 全体のストーリーラインを作成
という手順が多いです(私も以前はこの手順で作成していました)。
しかし、この手順でスライドを作成すると

  • ボツになるスライドやストーリーからずれるスライドが大量に生成される
  • 結局何が言いたいのかよくわからない資料になる場合が多い

といった問題が起こりがちです。

そこで、今回の研修会で紹介した手順はこちらです。

こちらのプロセスは
① 全体のストーリーライン&各スライドのメッセージを作る
② 各スライドのチャートを作成
③ ページをレイアウトする
④ 見やすいデザインに整える
という順序です。
こうすることで

  • メッセージとストーリーをサポートする必要十分なスライドが生成される
  • 言いたいことがストレートに伝わる

ようになります。

今回の研修会では、この4ステップについて、それぞれ詳細にお話ししました。

①全体のストーリーライン&各スライドのメッセージを作る


このパートでお伝えしたことは主に2つです:

  • まずロジックツリーを書いてから、各スライドのメッセージとストーリーラインを作る(いきなりスライドを作り始めない)
  • メッセージには必ず解釈を含める

特にロジックツリーをまず書くことが最も重要です。
有名な「雲雨傘」を例に、ロジックツリーからストーリーラインに落とし込む方法を紹介しました。

②各スライドのチャートを作成


このパートでお伝えしたことは、「チャートは基本的にテンプレートから選びましょう」ということです。
一般的なビジネスのプレゼン資料であれば、チャートの「型」があるので、そこから選べばスライド作成時間も短縮されますし、受け手にとっても「よく見るチャート」なので理解がしやすくなります。

そこでこのパートでは、定性・定量に分けてチャートのテンプレートを紹介しました。
定性チャートとしては、ツリー、テーブル、マトリックス、分岐図などを紹介しました。

こちらはツリーの例です。定性的な要素分解にも使えますし、エンジニア/データサイエンティストであれば複雑な計算式を分解する際にも便利です。

定量チャートとしては、横棒グラフ、積み上げ棒グラフ、ウォーターフォール、折れ線グラフなどを紹介しました。

こちらは横棒グラフの例です。データサイエンティストであれば、アルゴリズムの性能比較などでもよく使えるグラフです。

③ページをレイアウトする


このパートでお伝えしたことは、レイアウトについてもチャートと同じくテンプレートから選びましょうということです。
基本的なテンプレートはこちらの3種類になります。

研修会では、実際に具体的なスライド例を示しながら、チャートのレイアウト方法について解説しました。

例えば、こちらは「単一チャート(補完情報あり)」の例で、データ処理の結果・解釈を補完する際に用いるレイアウトです。

④見やすいデザインに整える


最後にここまでで作成したスライドを見やすいデザインに整えますが、
こちらについては素晴らしい書籍がたくさんあるので、詳しい解説は行いませんでした。
紹介した書籍は記事末尾の 参考書籍 に記載しました。


ただし、あまり書籍に書いていないポイントとして

  • 文字の大きさは12pt以上に
  • 細部にこだわる

の2点を紹介しました。

当日の質疑内容

一通り説明を行った後、QAセッションを行いました。
当日は活発な議論があり、例として以下のようなQAがありました。

Q: 資料に情報をどの程度詰め込むべきでしょうか?今日紹介いただいた資料よりも情報を詰め込む場合もあれば、もっと情報量が少ない場合もあると思います
A: 情報を詰め込みすぎると分かりづらくなるので、1スライド1メッセージが基本です。一方で、ビジネスのプレゼン資料は打ち合わせに出ていない人が読む場合があるので、口頭補足がなくとも意図が明確に伝わる程度には情報を入れた方が良いです。


Q: グラフは何で作ると良いですか?Matplotlibの場合、綺麗なグラフを作ることが難しいと感じています。
A: 分析時はMatplotlibが便利ですが、最終的に資料化する際はExcelで作成して見た目を綺麗にするのがオススメです。

実施後アンケートの結果

実施後に、今後の参考のためにアンケートを実施しました。
参加者37名中19名に回答いただきました。

Q.1 研修の内容は今後のご自身の業務に活用できると思いますか


5段階で評価いただきましたが、ありがたいことに回答者全員の方に「とてもそう思う」と回答いただきました。

Q.2 具体的に活用できそうなポイントを教えてください

自由記述で記載いただきましたが、研修会で紹介した①-③の内容全般について、さまざまなコメントをいただきました。

①全体のストーリーライン&各スライドのメッセージを作る

  • 資料作成の考え方(特に設計⇨作成)を活用すると資料・業務が変わると思いました。
  • メッセージを絞るところとか、先にストーリーを作るとか、全体的に色々ためになるお話でした!

②各スライドのチャートを作成

  • 紹介いただいた定性チャートのテンプレートが今後活用できると思いました
  • チャートの選び方が業務に活かせると感じました
  • 業務における資料作成を行う指針ができたため、迷うことが減り早く作成ができそうです。

③ページをレイアウトする

  • 見やすいスライド構成(タイトル、メッセージ、チャート)やチャートの補完情報をどう書くかというのがとても勉強になり、活用できそうです。

Q.3 研修内容の改善点があれば教えてください

こちらについては演習とフィードバックを設けた方が良いという意見をいただきました。
今回は一通り説明した後にQAセッションという形を取りましたが、もう少し時間を拡大して演習を入れると、より効果的かもしれません。

  • workshopなども開催して、体に染み込ませる取り組みがあると良いと感じました。
  • 演習時間を実際に取って、作業内容に対してフィードバックする時間があると良いと感じました。
  • 1スライド1メッセージの原則に則りメッセージについて考えるパートもあればより良いと感じました。

Q.4 プレゼン資料作成に関して、追加で取り扱ってほしい内容があれば教えてください

こちらについては、より実践を見据えて社内の資料レビュー会であったり、そもそも資料の種別ごとに推奨のテンプレートを用意した方が良いというご意見がありました。
テンプレートの用意については、前々から社内で声が上がっていたこともあり、現在整理を進めている状況です。

  • 社内でよく使われる具体的な資料テーマや実際の資料を使いながらのレビュー会も面白そうと思いました。
  • どのような資料を作れば良いかについても体系的に整理していただけるとありがたいです(相談があった時にどのような構成の提案資料とすれば良いか等)。

まとめ

研修会を実施してみて、アンケートでもたくさんのポジティブなご意見をいただきましたし、
その後実際に研修会の内容を参考に資料作成いただいているという嬉しい声を複数の方からいただきました。
技術者であっても資料作成の機会は意外と多く、その方法論が分からず困っている場合がそれなりにあるのだと感じました。
アンケート結果を踏まえつつ、今後もプレゼン資料の品質向上と作成効率化に向けた取り組みを行っていければと思います!

参考書籍

外資系コンサルのスライド作成術―図解表現23のテクニック (山口 周)
伝わるデザインの基本 増補改訂版 よい資料を作るためのレイアウトのルール(高橋 佑磨, 片山 なつ)
ノンデザイナーズ・デザインブック [第4版](Robin Williams)