展示会ってどうやるの? 〜チームで展示会に出てみた話〜

はじめに

こんにちは、Insight Edgeイノベーションハブで事業開発を担当している那須田です。 2025年5月に、大阪で開催された「コンタクトセンター/CRMデモ&カンファレンス」(通称CCCRM展)という展示会に参加してきました。半期ごとに行われているイベントで、コンタクトセンター関係者が多く来場し、先端技術を活用したツールやソリューションの展示が行われています。昨年から参加し始めた当社としては3回目の出展となります。

多くの方は「見る側」として展示会参加経験があるのではないかと思いますが、「出す側」として構想から当日のお客様あて説明・後片付けまで関わる機会は意外と少ないのではないでしょうか。そこで、今回は「展示会って実際どうやって準備してどうやって終わっていくの?」という疑問にお答えすべく、体験談をまとめたいと思います。

なぜ展示会に出たのか

Insight Edgeでは住友商事および住友商事Gr企業の多業界・グローバルに広がる広いフィールドを中心に、POC〜システム開発をワンストップで素早く行うことでDX実装を行っています。

各顧客の悩みに寄り添いながら個別プロジェクトを進めていくことが多いのですが、特に生成AI登場以降は、テーマやアウトプットが「これはいろんなお客様に使っていただけるのでは?」というものが増えており、ソリューションとして広く展開する取り組みも行っています。そのうちの一つが顧客の声・従業員の声分析を大胆に効率化・高度化出来るテキスト分析ツール「Voiceek(ボイシーク)」です。こちらのツールは顧客にご利用いただく中や導入にむけたPOCを進める中で出てきた要望や気付きをもとに継続して成長を続けています。

生成AI活用したVOC分析ツール「Voiceek」

 また、他にもコンタクトセンター関連での取り組み・知見がたまってきています。顧客あての営業電話の架電優先順位の最適化するAIモデル(「架電最適化モデル」)や、将来かかってくるコール数の予測に基づいた必要な応対オペレータ数予測を行うAIモデル(「オペレータ数予測モデル」)の取り組みが出てきており、ソリューション化を検討しています。

展示会への出展目的は、出展物のいるステージによってさまざまです。一般的には以下あたりがあるのではないでしょうか?

  • 見込み顧客獲得:名刺交換などを通じて営業フォローするための情報を集める
  • 認知向上・ブランディング:新サービス発表タイミングでの露出強化
  • 既存顧客との関係強化:対面でのさらなるリレーション構築・アップセルの機会
  • パートナー・アライアンス開拓:協業候補企業との出会いの場
  • 仮説検証:顧客とのナマの会話でニーズを理解したい

今回の出展では、もちろん新たな顧客獲得は狙いたいので大目標としているのですが、出展物それぞれに裏テーマがありました。Voiceekについては「さらなる進化に向けたニーズの確認」というテーマ。「架電最適化モデル」や「オペレータ数予測モデル」についてはそもそものニーズ確認というのが重要なテーマでした。個別プロジェクトで実施した取り組みにそもそも広いニーズが有るのか?というところです。

準備1:どこにだすか?誰とだすか?

まずは、出展の目的に応じて展示会を選ばないといけません。なんの切り口で探しに行くかというのは意外と難しいところだと思います。例えば「AIエージェント」関連でみてみると、少し調べただけでも片手に収まらない数が出てきます。その中から、出展のためのコストやそこで出会える顧客層、商談に実際に進んでいく本気度があるかなどで絞り込んでいく必要があります。

ChatGPTで検索したAIエージェント関連のイベント

こういった問題を一気に乗り越えられる方法が「出展パートナーを見つける」ということです。冒頭で書いた通り、当社のCCCRM展への参加は3回目となるのですが初回から継続してSCSK・SCSKサービスウェアとの共同出展です。

初回参加のきっかけとしては、Voiceekのベースとなった取り組みでのアプリケーションをSCSK宛に紹介し、SCSKがコンタクトセンター向けに提供するツール群とのシナジーがあることも見えたことでCCCRM展への共同出展のお誘いをいただいたという形でした。長年同イベントに参加しているSCSKから、イベント来訪者層や準備にどの程度の負荷がかかるか当日の動き方などのレクチャーを受け、多くの人員を割けるわけではない我々でも参加できそうかつ、反応を見たい顧客層が来訪すると確信して参加を決定することができました。

また、出展するブースの位置も非常に重要で、これによって来場者自体は多くても場所が悪い自社ブースはすっからかん...ということもありえます。イベントにもよると思いますが、ここも長年参加しているSCSKだからこそ把握しているスイートスポットの確保ができており、成功のために重要なポイントです。実際、イベント当日フロアを回ってみると、あの有名な企業が場所のせいで閑古鳥...というところもあり、体力をかけて準備した全てが無駄になりかねません。

やはり事情に通じている先輩と一緒に出すというのは特にビギナーにとっては非常に大事なポイントな気がします。

準備2:デモ・営業資料・リーフレット...終わらない制作物

さて、どこに出すか・誰と出すかが決まればあとはつくるのみ!です。上で触れた通りSCSK・SCSKサービスウェアとの共同出展ですので、3社での制作物と自社での制作物があります。濃淡ありますが当社が関わったものは以下があります。

  • 3社制作物
    • 既存顧客あてにイベント周知するための「事前チラシ」
    • 当日、来訪客あてに配るための「当日チラシ」
    • 当日、ブースにはる大きなパネル
  • 単独での作成
    • 営業資料:すでにあるものをアップデートや新規作成
    • チラシ:3社のものとは別に「Voiceek」宣伝用
    • Voiceekデモ環境:顧客層に合わせたサンプルデータの作成とデータ適用した環境準備
    • Voiceekベータ機能:顧客のニーズ・反応を確認したい機能の実装
    • ミニセミナー資料:
      • 各出展物の紹介資料を10分以下のトーク用に整理
      • トークスクリプト
  • 紹介動画:ミニセミナーで活用するVoiceek機能紹介動画

準備は2〜3ヶ月前から始め、週次定例で相談をしながら進めていきました。恥ずかしながら、、前半はなかなかエンジンが掛かりません。まだ何をどう作るか見えていないというのもあって作業量が具体的に見えてないせいもあるかもしれません。

本格的に焦り始めるのは残り1.5ヶ月というあたりからです。作るべきものが見え、あまりの多さに圧倒されます(自業自得です...)。ここからはなんとか作成を間に合わせるため(周りのメンバーに迷惑をかけながら...)一気にギアを変えて取り組みます。たくさんの制作物があるため、単独で対応することはまず難しいでしょう。各プロジェクトのメンバーを巻き込んでヒアリング・場合によっては制作を手伝って貰う必要もありますし、お客様の目を引くためにはデザインにもこだわる必要があります。

幸い当社は部署ごとの垣根が低く協力を仰ぎやすく、また社内に強力なデザインチームがあり目線合わせをしながらクイックに進められたことでなんとか締切に間に合わせることができました。逆に、社内が縦割りの気配あり...だったり、デザインの外注対応を前提とされている場合は、コミュニケーションのリードタイムや意思疎通の齟齬を取り戻す時間をしっかりと見ておかないと「締切に間に合わない!」という事がありえます。準備期間の落とし穴の一つとして知っておくべきことかもしれません。

これ以外にも、ロジ面での調整が多数存在します。wifiはつかう?ブースの造作はどうする?組み立ての業者は?当日使うPCは?当日の集客のためのチラシ配り要員は?...地味ですが決めることは山積みです。ロジ面は、表に出る出展物にも増して経験がモノを言う分野になります。先程の繰り返しとなりますが、やはり出展経験があるパートナーとの出展がおすすめです。

会場設営、そして当日

前日

なんとか制作物を間に合わせた、と一息つこうとするとすぐにイベントです。CCCRM展では、イベント前日の午後から会場設営が始まります。作成したパネルやその他ブース設営は展示会対応を行う業者がおり、対応してもらいます(ロジとして固めておく)。周囲のブースの設営を観察していると、どこまで業者に対応してもらうかは各社ごとに異なります。準備要員が足りなくてかなり苦労している会社も見受けられました。

顧客宛説明をするためのPC・モニタはレンタルすることが多いと思います。それらの設定は自分たちで行います。何らかのソフトウェアのインストールが必要な場合は十分なスペックを持ったPCかどうかは意識しておいたほうが良いでしょう。

前日準備の様子:ブースに設置したパネル

当日

当日が来ました。イベントスタート前に朝礼をして、名刺交換のルールやもらったコメントのメモの仕方など目線合わせをしておきます。これをしないと対応者によって得られる情報にばらつきが出て、顧客ニーズの理解が進まなかったり、場合によっては潜在顧客を気づかずに逃してしまうということになります。Insight Edgeチームでは、事前にニーズを探るための観点と質問をリストアップしておいて手元に持っておくようにしておきました。

10時になり開場します。ここからは立ちっぱなし、喋りっぱなしです。イベントにもよると思いますが、CCCRM展は多くの来訪者があり、座る時間というのはほぼありません。そのため、足腰と喉の耐久ゲームとなります。ただ、応対すればするほどだんだん自分の対応がこなれてくるということに気づき、ある種の「展示会説明者ハイ」のようなものが訪れます。とはいえ、、状況が許せばシフトに少し余裕を持てる人数を用意しておくことをおすすめします。

忙しい中でも一応繁閑は発生します。お昼時やセミナーが開催されている時間等が少し客足が落ち着くタイミングとなります。このあたりもイベントごとに違うと思うので事前に見極めてシフト組みに活かせるとスムーズです。

また、来訪者の傾向として、各社複数名でイベントにいらっしゃる印象です。そして、なにかツール選定などテーマを持って来場している場合、全体を各人がグルっと回った上で良かったブースを意見交換。その後、全員(3名など)で改めて良かったブースを来訪という形で進めているように見えます。当たり前のことを書いてしまいますが、毎回「一球入魂」の説明をしないと二回目の訪問をもらえず予選落ちしてしまうということになるので、特に疲れが溜まってくる午後の説明で気をつけるべきポイントです。

CCCRM展は2日間のイベントですが、展示会ハイのうちにあっという間に終りを迎えます。展示会が終わりには夕礼が開催されます。ここで集客の結果が発表されます。各ブース悲喜こもごもの様子が見られ、アツくなります。結果によって打ち上げの盛り上がりが左右されるでしょう。

さて、最後は後片付けです。PCのレンタル元への返送や制作物の処理などがあります。会場の平常時間もあるのでしっかりロジを確認しておきましょう。また、制作物については今後の営業活動や次回以降の展示会で使えるものもあるのではないでしょうか?特にチラシについてはイベント以外でも気軽に使えるものかつ印刷コストも大きくないので今後の活用のために多めに準備して余らせても良いかもしれません。

当日の様子:Voiceekミニセミナー実施中

終わりに:展示会はチームでつくるもの

最後に、上で触れなかったが重要と思っている展示会参加の価値について改めて振り返っておきたいと思います。

締め切り効果

ツールでもソリューションでも立ち上げ期は明確な締め切りが作りにくい部分があると思いますが、展示会はどうあがいても動かせない締切を作ってくれます。そして、締切後にそのまま使える資料や機能など様々なレガシーを残してくれます。これは見逃せない大事なポイントだと思います。

チームとして動く効果

チームでカバーし合いながら動くことでしか成功裏にイベントを終えることはできません。というか、そもそもイベントにたどり着けません。また、「締切に向けて制作物を決めてそれをクリアしていく」という小さくはあっても成功体験をチームで積めることでその後のチーム内での連携の形の原型も作られます。立ち上げ期にあるチームの形作りの場としてや、逆に営業サイドと開発サイドが分離されてしまっている状態からの再度のチームアップのきっかけとしても機能すると思います。    

以上、地味な側面も含めて、展示会出展にあたって先に知っておきたかったなと思うポイント・参加の価値を振り返ってみました。

Insight Edgeでは、MVVのValueとして「やりぬく」、「やってみる」、「みんなでやる」を掲げて、クライアントワークでなく事業会社のデジタルバリューアップ実現を担うパートナーとして事業を行っています。展示会は参加のお誘いを受ける形で「やってみる」で始め、小さなサークルでは対応しきれないことに気づき、様々な社内外メンバーを巻き込んで「みんなでやる」イベントとして盛り上げ、締切までに「やりきる」というまさに当社Valueを総動員するようなイベントでした。Valueを体現して助けていただいた皆様に大変感謝しています!

今後も当社は新しい領域のソリューション開発を進めていきたいと思っています。事業開発ポジションも鋭意募集中ですので、是非下のバナーからご確認の上ご応募ください!