はじめに
はじめまして。Insight Edgeデザイン部 共創設計チームの小森谷です。
本記事は、私が2025年の夏にInsight Edgeへ参画して最初に取り組んだプロジェクトについてまとめたものです。 チームの一員としてどのようにプロジェクトを進め、何を感じ、どんな学びを得たのか――そのリアルな過程をお伝えできればと思います。
- はじめに
- この記事でわかること
- 参画初日のオリエン、最初の仕事は「全社会議」の設計だった
- 制約条件とゴールイメージ から“設計の手がかり”を探る
- 素案と対話 ― 背景にある意図を探る
- ワークショップの手法選定と具体化
- 当日の様子 ― “聴き合う”が立ち上がる瞬間
- 参加者の声(抜粋)
- これからも「共創」を続けるために
この記事でわかること
- 10日で全社会議を設計した“段取り”
- フィッシュボウルを選んだ背景や経緯と内円の緊張を下げる工夫
- AIを「観察者/構造化支援」として扱うワークショップ設計の実践プロセス
参画初日のオリエン、最初の仕事は「全社会議」の設計だった
「10日後の全社会議で、Insight Edge Vision2030をテーマにワークショップをしたい」

Insight Edgeに参画した初日、最初のミーティングでそう告げられたとき、私は正直状況をつかみきれていなかった。 けれど、不思議と不安よりもワクワクが勝っていたように思う。
その後のプロセスで、少しずつInsight Edgeの“文化のようなもの”を体感していった。 配属先は「デザイン部 共創設計チーム」。“共創をデザインする”という言葉の意味を、現場で手探りしながら学んでいった。
本稿では、その10日間を当時の視点と現在の理解の両方から振り返り、初仕事として取り組んだ「Vision2030 ワークショップ」の設計から実践に至る過程を記録したい。
制約条件とゴールイメージ から“設計の手がかり”を探る
今日は7月15日。開催日は7月25日。本番まで、あと10日...?
初日のオリエンで共有されたのは、こんな概要だった。
- 実質的な準備期間は7営業日
- 会場は大手町オフィスの会議室
- スクリーンは2つ
- 参加者はおよそ60名
2時間半という限られた時間の中で、前半はマネジメント層によるインプットセッション、後半は参加者同士によるワークショップを行う。
淡々と「Vision2030」について語るCINOの森さんと、静かに頷く共創チームリーダーの飯伏さんを眺めながら、後7営業日とは思えない落ち着きぶりだな、と考えていた。

まだ社内の人の顔もほとんど知らず、物事の進め方もつかめていなかった私は、会議の設計の前にまず背景や状況の把握に集中することにした。
2回目のミーティングでは、初回で聞いた内容をヒアリングシートにまとめ、まだ聴けていない部分(空白のセル)を埋めながら、森さんと認識をあわせていく。 (※ヒアリングシート=設計意図や制約を整理するための事前質問票)
- どんな状態を目指しているのか
- 参加者にどんな体験をしてほしいか
- 起きてほしいこと、起きてほしくないこと
一つひとつ確認しながら意図を言語化して、全体像を可視化する。私はこの“解像度を上げていく”時間がとても好きだ。 ふとした瞬間に出てくる言葉や迷いの中に、設計のヒントが潜んでいる。
この時の森さんは、マネジメントからのメッセージを届けるだけでなく、メンバー自身が自分の言葉で未来を語れるようになってほしいのだと語っていた。
ひととおり埋めたヒアリングシートを出発点として進行を整理した上で、素案に着手する。

素案と対話 ― 背景にある意図を探る
限られた時間の中で最善を尽くすために、とにかく早い段階でドラフトを出すことを意識した。
まず手始めに、前半と後半を有機的に接続することを意図して「アウトプット前提でインプットを聴く」構成を提案。インプットセッションの冒頭で「本日の問い」を提示した上で、参加者がワークシートにメモをとりながらセッション内容を聴き、後半はそのメモをもとに語り合う仕掛けである。




上記の他に、コンセプト案、タイムライン、大枠の流れをまとめたスライドなど、当日の流れをイメージできる程度の素案を共有すると、すぐにフィードバックが返ってきた。
- 「マネジメントのメンバーは会話に混ざるべきか?混ざると誘導っぽくならないか?」
- 「全員がフラットに話すための仕掛けを入れられないか?」
- 「そもそも全員が同じように話すのが本当にいいのだろうか?」
- 「もう少し後半のシャッフルを増やせないか?」
- 「シャッフルするなら、ワールドカフェとか?」
- 「いや、今の構成だと時間が足りない」
さまざまな意見が上がると、小さな混沌が生まれる。複数の混沌が混ざって大きな混沌になる。私はそれらにまみれながら、それぞれの意図を探っていった。
ワークショップの手法選定と具体化
人間と人間の共創プロセス
森さんと飯伏さんがどうも「シャッフル」にこだわる様子だったので、あらためて問いを立ててみた。
「シャッフルすることで、何が起きて欲しいのか?」
これを起点に話すうちに、森さんがみている”景色”がよりクリアになっていった。
「部門横断で話す場が少ない、部門によって見えている現実が違っている」
そして「他の部門の話を聴いてほしいんだよね」と続けた森さんの言葉をきっかけに、ワークショップの軸は、“語り合う”から“聴き合う”へシフトした。
「聴く」という行為をどう設計するか。 この問いから”フィッシュボウル”という手法に辿り着くまでに、さほど時間はかからなかった。
「フィッシュボウル」とは「金魚鉢」を模したアクティビティの一種で、対話を深めながら、その内容を参加者全員で共有することができる。立場の異なる参加者が、お互いの観点をよく理解し、傾聴することを促進する効果がある。円座の「内側」で進行する話を「外側」から眺めるという構図から、フィッシュボウル(金魚鉢)と呼ばれている。
素案を起点にしたこの対話のプロセスは、まさに「共創」だったように思う。 人と人とのやり取りの中で「意図」が立ち上がり、少しずつ形を変えていく。
ちなみにこの時点ですでに、全体会議当日の3日前である。
人間とAIの共創プロセス
ざっくりの方向性やアイデアが出揃ったところで、AIの出番である。ここからは、実際にAIと共創したプロセスの一部を紹介する。
私はまず素材を一括投入し「制約(優先事項・時間・人数など)を踏まえて、目的整合性と運営難易度の観点から素案を比較し論点を構造化してください。」と依頼した。
もちろん一発で整理はできないが、「なんとなくこれじゃないかな」という直感的な発想が、AIとの協働により構造整理されていくのはとても気持ちがいい。
私にとってAIは「観察者」であり「構造化の支援者」でもある。そしてその“観察”の視点は、人間が見落としがちな設計の盲点を照らしてくれる。

AIには3案(ラウンドテーブル・ワールドカフェ・フィッシュボウル)をフラットにインプットしたが、推奨はフィッシュボウル。
「内円の発言者が緊張する」懸念については、ワークシートのメモを元に話してもらうことで多少は緩和するかもしれない。メモは緊張した時の”お守り”にもなる。比較検討の結果、時間効率と参加密度の観点からフィッシュボウルを採用した。
しかし、AIが助けてくれるのは思考プロセスまで。 意思決定の後に待っていたのは最も大きな「山場」、人間の仕事だった。
チーム編成や会議室の配置検討などは森さんと飯伏さんがリードし、ワークシートの印刷や当日の備品の準備は共創設計チーム兼務の楠さんや酒井さんがサポートしてくれた。 そしてマネジメントの皆さんがインプットセッションの資料を準備し、当日の音響や会場設営は経営管理部の皆さんが整えてくれた。 縦横無尽にパスを回しあいながら場を作っていく感覚だった。

当日の様子 ― “聴き合う”が立ち上がる瞬間
そうして迎えた全社会議の当日。 会場セッティングと並行して、ファシリテーターと書記を担う皆さんに「進行ガイド」の説明をしたのだが、なんとも不思議な安心感があった。初めまして、とは思えない温かくサポーティブな雰囲気に、ああ今日はきっとうまくいくな、と思った。

前半のインプットセッションでは、マネジメント層から「Vision2030」の背景と想いが語られた。
会場は静かだったが、ただの“聴講”の静けさではない。
ワークシートにメモを取りながら、自分の中の“問い”を探しているような集中力が、会場に満ちていた。

後半のフィッシュボウルが始まる。 進め方を説明した後、森さんと飯伏さんから参加者のみなさんへのメッセージをもらった。
森さん「ぜひこの機会に、他の部門の考えていることを聴いてください。」
飯伏さん「金魚鉢の外側で聴く時にもぜひメモをとってみてください。」
3つの金魚鉢の中心の円で数名が対話し、周囲の人たちはそれを静かに聴く。 4回のターンで円の内と外が入れ替わり、発話が循環していく。
この「話す」と「聴く」が混ざり合いながらひとつの景色を描いていく構造は、今回の全社会議で目指した“共創”のあり方そのものだった。 ファシリテーターが全体の流れを見守りながら、発話のテンポや入れ替わりのタイミングを調整していく。 書記はリアルタイムでMiroに要点をまとめ、話の展開を可視化していく。

私はその全体を眺めながら、この“聴き合う”という構造が確かに機能していることを感じていた。 中心の会話が外側に波及し、静かに聴いている人たちの表情や姿勢にも変化が生まれていく。時おり聞こえてくる朗らかな笑い声が印象的だった。
組織ごとを自分ごととして捉えるには、自分自身の言葉で“語る”ことが重要だ。 けれど、“聴き合う”という行為を構造として仕込むことで、全員がその対話の一部になる。それが、この日の場で起きていたことだった。
参加者の声(抜粋)
- フィッシュボウル形式は非常に好評で「新しいスタイルとして参考にしたい」「観察も発言も楽しめた」との声が多数。
- 他部署・他職種の考えに触れることを「刺激的」「意外だった」と評価する傾向が強く、相互理解の促進効果が確認できた。
- 一方で、「書記の負担が大きい」など運営面の改善要望が複数寄せられた。
これからも「共創」を続けるために
全社会議を終えてしばらく経ったころ、社内のさまざまな場で「フィッシュボウル」という言葉を耳にするようになった。噂によると、別の部門のイベントでも実施されたらしい。 一度きりの企画で終わらず、“聴き合う”という構造が、組織の中に息づいている。 それは今回の設計の成果のひとつだと思う。

このプロジェクトを通じて、共創の場づくりは「正解を示すこと」ではなく、「問いを共有すること」なのだと実感した。 同じテーマを前にしても、立場や経験によって見えている景色は違う。 その違いを前提に「共通の問い」に向き合っていくことが、共創の出発点になる。
短期間の中で進めた今回の設計には、もちろん反省も多い。 アンケート結果を眺めながら、今後の糧となる示唆をたくさん受け取った。 Insight Edgeの「共創設計チーム」は、そうした試行を通じて実践知を積み重ねていく組織なのだと思う。 これからも、ステークホルダーを広く捉えながら「共創の価値」について考え続けていきたい。
筆者について
小森谷 有紀(こもりや ゆき)
紙媒体の編集者を経て、ポータルサイトの速報エディターに転身。通信キャリア直下のモバイルメディア事業において、黎明期の立ち上げから拡大、統合まで幅広い業務を経験した後、複数のスタートアップ企業にてコロナ禍のリモート環境における事業企画や組織開発の仕組みづくりを推進。2025年7月よりInsight Edgeに参画。デザイン部・共創設計チームに所属し、ワークショップデザインやファシリテーションを担当。