ノーコードでもここまでできる! 10分で完成するCopilot Studioデータ分析エージェント

この記事は Insight Edge Advent Calendar 2025 の10日目です。

こんにちは、Insight Edgeの齊藤です。 生成AIサービスの進化は著しいものがあります。「会話しながらアプリを作る」「文章で要件を書くだけで構造を提案してくれる」といった体験が、いよいよ現実の選択肢になってきました。

私自身は普段エンジニアとしてコードを書いていますが、「ノーコード/ローコードでどこまで実現できるのか」「どの領域からは従来どおりコードを書いた方がよいのか」を見極めることが、技術の目利きや自身の価値の把握、さらにはキャリアを考えるうえでも重要だと感じています。

そこで今回は、その試金石としてCopilot StudioとDataverseだけで、ノーコードでデータ分析エージェントを作成してみました。

Power Platform と Copilot Studio の概要

データ分析エージェントの作成にあたり、利用したサービスについてご紹介します。

Power Platform

Microsoft Power Platformは、ざっくりいうと「業務アプリをノーコード/ローコードで作るためのプラットフォーム」です。

  • Power Apps:業務アプリを作る
  • Power Automate:ワークフロー/RPAを作る
  • Dataverse:アプリの裏側で動くデータベース
  • Power BI:可視化・ダッシュボード
  • Copilot Studio:生成AIエージェントをローコードで作るツール

参考:公式ドキュメント(Microsoft Learn)

Copilot Studio

Copilot Studioは、Power Platform上で動作する「生成AIエージェントをローコードで作るためのツール」です。主に下記の内容を実現可能です。

  • 会話フローの設計: GUIでトリガー・質問・条件分岐などをつなげて、業務に沿った会話フロー(トピック)を定義できます。

  • ナレッジを使った回答(RAG): Dataverse、SharePoint、ドキュメント、Webサイトなどをナレッジソースとして登録し、それらを元にした生成AI回答を行えます。

  • 各種サービスとの連携・アクション実行: Power Platformのコネクタやプラグインを通じて、Microsoft 365や外部SaaS、自社APIにアクセスし、データの参照・更新まで行えます。

  • Microsoft 365 / 各チャネルへの展開: 作成したエージェントは、Microsoft 365 Copilotの拡張としてTeams / Outlookなどから呼び出せるほか、WebサイトやPower Appsなどにも公開できます。

Copilot Studioのエージェント設定画面

Power Apps のプランデザイナー

Power Appsは、業務アプリをノーコード/ローコードで構築するためのツールです。今回はその中の「プランデザイナー(Plan designer)」だけを使い、Dataverseのテーブルとエージェントを短時間で準備しました。

「解決したいビジネス課題」を文章で入力すると、「要件エージェント」「プロセス エージェント」「データ エージェント」「ソリューション エージェント」が、Power Platform製品群をどう組み合わせるかを含めて具体案に落とし込んでくれます。内容が想定と違う場合も、生成AIに追加で指示することで修正できます。

今回はPower Appsのアプリ本体は作らず、プランデザイナーだけを使ってテーブルとエージェントを短時間で準備しました。

プランデザイナーの初期画面

データ分析エージェント作成

それでは実際に、データ分析エージェントを作成していきます。 今回は次の構成で、ダミー案件情報からグラフを可視化するエージェントを作ります。

  • データ:Dataverse(案件・担当者・工数記録・予実)
  • 実行:Copilot Studio + コードインタプリタ(Python集計・描画)
  • 出力:グラフとサマリをチャット出力

1. プランデザイナーにプロンプト入力

Power Appsのプランデザイナーを開き、下記だけ入力しました。 これによりプランデザイナーが要件定義からデータ定義、システム構成まで案を作成してくれました。

copilot studioとDataverseを使って、案件に関する予実や工数を確認するデータ分析エージェントを作りたい

プランデザイナーへの初期入力

2. Dataverse確認

プランデザイナーが作成したDataverseを確認します。 ユーザ側で修正可能ですが、テストデータ含め問題なさそうなので次に進みました。

Dataverseテーブルの関連図

Dataverse案件データの例

3. システム構成の調整

プランデザイナーからは、データ分析エージェント以外に「工数記録サポート」「工数集計ダッシュボード」なども提案されました。
今回はMVPを意識し、「コードインタプリタを使うのでBIダッシュボードは不要」「エージェントは1つにして」と指示しました。 プランデザイナーへ修正を指示する例

これにより案件・担当者・工数記録・予実テーブルと単一エージェントだけに整理されました。 修正後のシステム構成

4. エージェント設定変更

プランデザイナーにより、Copilot Studioを用いたエージェントについて、プロンプト案やDataverseへの接続はすでに作成されています。 今回は以下だけ設定変更しました。

エージェント設定を最初にオンにする
  • 「設定」>「はい、利用できるツールやナレッジを適宜使用し、応答を動的にします。」をオン
  • 「コードインタプリタ」をオン

プロンプト修正

プロンプトは 「案件、担当者、工数記録、予実データのテーブルを活用し、グラフとサマリを返答するエージェント。」 としました。

結果1

ここまでの手順だけで、

  • Dataverse+Copilot Studioのデータ分析エージェント
  • 条件入力 → 集計 → グラフ画像をカード表示

という流れを、ほぼノーコードで形にできました。 完成したエージェントに実際に質問した際の挙動は下記の通りです。

案件と工数の関係を可視化

一方で挙動は安定せず、「案件ごとの予定工数vs実績工数」という質問の回答は失敗しました。 Dataverse自体は参照できているものの、エージェントはスキーマの関係性を十分に理解できていないことが推測されます。

失敗例

修正:テーブル定義をプロンプトに渡す

Power Appsのテーブル定義画面からスクリーンショット画像を取得し、生成AIでテキスト化した「テーブル項目説明」をそのままプロンプトに追記しました。

追記した定義文(抜粋)

案件、担当者、工数記録、予実データのテーブルを活用し、グラフとサマリを返答するエージェント。

##### データベーステーブル項目説明


## 1. 案件テーブル
- 案件名: プロジェクトの名称(案件A、案件B等)
- 開始日: プロジェクトの開始予定日
- 終了日: プロジェクトの終了予定日
- ステータス: 案件の進捗状況(進行中、完了、計画中、中止)
- 担当者数: 案件に割り当てられている担当者の人数

## 2. 予実データテーブル
- 案件名: 対象案件の識別名
- 案件ID: 案件テーブルとの紐付けキー
- 予算工数時間: 計画上の作業時間
- 実績工数時間: 実際に費やした作業時間
- 予算金額: 計画上の予算額
- 実績金額: 実際にかかった金額
- 計画との差異: 予算と実績の差額(正値は予算オーバー、負値は予算内)

## 3. 担当者テーブル
- 担当者名: 社員の氏名
- 役割: 職務上の役職(経営者、プロジェクトマネージャー、現場担当者等)
- メールアドレス: 連絡先メールアドレス

## 4. 工数記録テーブル
- 工数記録名: 作業記録の識別名
- 担当者ID: 作業を行った担当者の識別ID
- 案件ID: 作業対象の案件識別ID
- 作業日: 作業を実施した日付
- 工数時間: 作業に費やした時間数
- 作業内容: 具体的な作業内容(設計作業、開発作業、テスト作業等)

結果2

テーブル定義をプロンプトに定義した後は、予定vs実績の棒グラフや担当者×案件のヒートマップなど、複雑な集計もプロンプトだけで生成できるようになりました。 主な改善点は次のとおりです。

  • Joinが案件↔予実↔工数記録の粒度・方向で正しく組まれるようになった
  • 予算工数・実績工数など抽出項目の取りこぼしや取り違えが減った
  • Pythonコード(集計・可視化)の生成精度が上がり、そのままコードインタプリタで実行できるケースが増えた

予算工数と実績工数の比較グラフ

担当者×案件の工数ヒートマップ

エージェントの挙動変化と現状の限界

2025/11/25時点では「生成オーケストレーションモード」をオンにするとエージェント自身が回答を返せていました。 その後2025/12/3時点の確認では、回答が一瞬生成されたあとすぐ消え、システムがデフォルトのフォールバックである「会話の強化」トピックへ自動切替する挙動になっていました。 その結果、少なくとも私の環境ではうまくグラフを生成できなくなってしまいました。

より安定的に動かすのであれば、「ユーザーから条件を聞く → Dataverseからデータを取得 → Pythonで集計・グラフ生成 → 結果を返す」といった流れを、Copilot Studioのトピック(会話フロー)として明示的に組む必要があります。

また、その他にも下記のような制約が明らかになりました。

  • ローコード特有の制約:細かいカスタマイズが難しい/作成したロジックの再利用・移植に工数がかかる/環境分離やバージョン管理がコードベースより煩雑
  • Copilot Studio特有の制約:Reflection(自己評価ループ)など複雑なフローを組みづらい/エージェント実行が約2分を超えると失敗するため、複雑なタスク実行に不向き

これらの情報は日々のアップデートにより変わる可能性も大きいため、公式のドキュメントを確認いただければと思います。

まとめ

今回の検証では、Copilot Studioを含むPower Platform環境により、10分程度でデータ分析エージェントを構築できました。初回の試行錯誤を含めても1時間ほどでグラフ生成まで完了できました。 一方で、内部の設定はブラックボックスな部分も多く、挙動もサービス更新によって変わる可能性があります。安定的な動作やカスタマイズ性などが重要な場合は、現状はスクラッチでの開発が無難だと感じました。 最後に、記事執筆中にもGoogle Workspace Flowsが発表されるなど、生成AI関連のローコードツールの進化は目まぐるしいものがあります。今後も「ノーコードでどこまで任せるか/どこからコードで実装するか」を継続的にキャッチアップしていきたいと思います。