不確実性の高いプロジェクトで1年間PMを経験して見えた3つのこと

はじめに

こんにちは。Insight Edgeの松嵜です。

私は入社時から一貫してアジャイル開発のエンジニアとしてプロジェクトに携わってきましたが、今後のキャリアを考える中でのステップアップとして、プロジェクトマネージャー(以下PM)にも挑戦してみたいと考えるようになりました。

そして機会に恵まれ、昨年の約1年間、生成AIを用いた不確実性の高い案件を中心にPMとしてプロジェクトに関わる経験をさせていただきました。

本記事では、その経験をもとに得た気づきを3つご紹介させていただきます。

目次

1.PMは「最適解の探索」と「意思決定」をし続ける仕事

PMを経験してまず感じたのは、
PMの本質は 「価値の最大化に向けて、最適解の探索と意思決定を重ねていくこと」にあるのではないか、ということです。

当初イメージとのギャップ

私はこれまでエンジニアという立場としてアジャイル開発に携わっていたため、不確実性の高いプロジェクトにおいて、「仮説検証と改善を繰り返し、価値を積み上げていく」という進め方自体には馴染みがありました。

ただ、実際にPMとして現場に立つと、その過程は想像以上に「思考」と「判断」の連続でした。

実際のプロジェクトでは軌道修正の連続

特に生成AIを用いたプロジェクトでは、出力が確率的であるため、最初から正確なゴールイメージを描くことは困難です。

そのため、実際のプロジェクトでは、まず小さく速く形にし、仮説検証とユーザーフィードバックをもとに改善を短いサイクルで繰り返しながら進めていきました。

ただ、検討した改善方針で必ずしも思うような結果が得られるとは限りません。 実際に、進行する中で新たな課題が発生することもあり、その都度「最適解」を模索しながら、以下のような見直しや判断を行いました。

  • 優先順位の再定義
    • プロダクトの核となるため、新機能のUI作り込みよりも精度改善に注力する
  • 改善方針の見直し
    • 出力精度を上げるため、改善方針を繰り返し見直す
  • 仮説検証サイクルの前倒し
    • 不確実性を早期に解消するため、当初の予定よりも仮説検証サイクルを前倒しする

特に改善方針は技術的な内容を含むため、エンジニアと対話を重ねながら、「LLMに与えるコンテキストの渡し方」や「処理フローをどうするか」など、具体的な実現手段も含めて検討しました。

また、プロジェクトの意思決定においては、関係者それぞれが納得感を持つことも重要です。 そのため、各種判断においては、顧客やプロジェクトメンバーと密に対話を重ねていきました。

その積み重ねが、最終的に顧客に満足いただけるプロダクトにもつながったと考えています。

試行錯誤を通じて見えた、PMに求められること

プロジェクトにおける意思決定を改めて振り返ると、
「顧客への価値を最大化する」という観点から

  • 顧客が本当に求めている価値(言語化されていない期待値)は何か
  • アプローチ方法は正しいのか、より適した方法がないか

を常に考えながら判断していたと感じます。

正直、エンジニアとして参画していた頃は、 最適な実現方法を考えることに注力してしまっており、 「価値」や「課題」に対して十分に意識を向けることができていませんでした。 今回PMを経験したことで、「価値や課題そのものを問い直すことの重要性」に改めて気づくことができたと感じています。

このような経験を通じて、あるべき姿を問い直し、意思決定をし続けることこそが、プロダクトの価値を最大化するためのPMの役割であり、難しくもやりがいのあるポイントなのではないかと考えています。

2.密なコミュニケーションがより良い意思決定をつくる

先述した「意思決定」を速く、そして精度高く進めていくためには、 関係者間での高頻度かつ深い対話、すなわち 「密なコミュニケーション」 が重要だと感じました。

メンバーを適切に巻き込む

プロジェクトにおける意思決定においては、一人で考え続けるだけでは視野が狭くなり、判断材料や選択肢が限られてしまいます。

特に業務改善システムのようにドメイン知識が重要な領域では、顧客の意図や業務理解が曖昧なまま進めると、判断の前提がずれ、手戻りにつながりやすくなります。

一方で、最初からすべてを把握することは現実的ではありません。 だからこそ、対話を重ねて解像度を上げながら、意思決定に必要な情報を揃えていくことが不可欠でした。

対顧客・対エンジニアとのコミュニケーション

その前提のもと、実際のプロジェクトでは以下のような点を意識しながらコミュニケーションを取っていました。

対顧客:要望の「背景」を深掘りする

  • 要望をそのまま受け取るのではなく、背景にある意図や真の課題まで深掘りする
  • 週次定例に加えチャットも活用し、意思決定に必要な情報をタイムリーに確認する
  • 対面の場では、オンラインでは拾いきれない現場の温度感や補足情報を含めて把握する

対エンジニア:「なぜ」を含めて認識を揃える

  • 日次の共有会を設け、顧客からのフィードバックや課題解決の方針について認識を揃える
  • プロジェクトの中で「何をするべきか」だけではなく、「なぜそれが必要なのか」「何のためにやるのか」といった理由や目的も共有する


こうしたコミュニケーションの積み重ねが、実際の意思決定においても大きく活きていました。

例えば、当初考えていた方法で思うような結果が出なかった場合には、定例を待たずにチャットで関係者に共有・相談を行うことで、別のアプローチでの検証を素早く進めることができました。

また、コミュニケーションはPM対顧客・PM対エンジニアの個別のやり取りだけではありません。
顧客との定例にエンジニアも同席することで、技術的な観点も踏まえた議論ができ、優先順位や進め方をその場で決められる場面も多くありました。

より良い判断は、対話から生まれる

こうした連携の結果として、意思決定における大きな認識のずれを抑えながら、プロジェクトを前に進めていくことができたのではないかと感じています。

また、エンジニアとしてプロジェクトに携わっていた頃は、意思決定に迷った際、技術ドキュメントやコードを調べることが解決の糸口になる場面が多くありました。 一方でPMとしては、早い段階から関係者と対話を重ね、多角的な視点やアイデアを得ることが、より良い判断につながったと感じる場面が多かった印象です。

このような経験から、関係者と密に対話を重ねていくことこそが、プロジェクトの重要な意思決定の質を高める鍵なのではないかと考えています。

3.先を見据えた意思決定の重要性

さらに、技術の進化が非常に速い現代において、顧客への価値を最大化するためには、「将来の変化を見据えた意思決定」が重要だと感じました。

生成AIの進化は速い

このように感じた背景には、特に生成AI領域における技術やサービスの進化の速さがあります。 作っている機能や仕組みが短期間で陳腐化したり代替される、そんなことも珍しくありません。

実際のプロジェクトでも、

  • 独自開発で実現しようとしていた機能の一部が、Microsoft Copilotなどの標準プロダクト側に追加される
  • これまで課題となっていた精度や挙動が新しいモデルの登場によって解決される

ということが発生し、技術の進化によって前提が変わる場面を何度も経験しました。

将来目線での価値を考える

このように、前提が大きく変わりうる環境下では、単に目先の課題に対する解決策を考えるのではなく、最終的に何を実現したいのかという全体像から逆算し、今取り組むべきことは何かを判断していく必要があります。

その際には、プロダクト全体の観点から

  • 持続的な価値や差別化要素を見極めていくこと

加えて、将来的な拡張性やAI活用を見据えたデータ基盤の整備などの

  • 土台となる仕組みそのものに目を向けること

の重要性も感じています。

PMに求められる「未来視点」の役割

このような先を見据えた視点は、PMだけでなくプロジェクトメンバー全員が持つべきものでもあります。

これまでエンジニアとして携わる中でも、技術的な進化やその影響を踏まえながら解決策を考えてきました。 一方でPMには、技術面の変化も踏まえながら、プロダクトのあるべき姿や今後の変化を見据え、中長期的な価値の観点から顧客の意思決定を支援していく役割が求められるのではないかと感じました。

このように、目の前の課題に対してだけでなく、将来を見据えて判断することが、真の課題解決や価値創造において重要だと考えています。

チャレンジを支えたInsight Edgeの環境とマインド

ここまで、PMを経験して感じた3つのことについて紹介してきましたが、
今回の挑戦にあたっては、Insight EdgeのValueである

  • やり抜く
  • やってみる
  • みんなでやる

を体現する環境とマインドに大きく支えられました。
※Insight EdgeのValueについてはこちらの記事をぜひご覧ください。

正直なところ、初めての役割を担う中では、進め方を含め判断に迷う場面が何度もありました。

ただ、周囲にはプロフェッショナルな専門性や多様な経歴を持ったメンバーがいたり、上長と気軽に相談できる1on1の場があったりしたため、「やってみる」を後押ししてくれる、挑戦しやすい環境があったと感じています。

また、Insight Edgeでは特定の役割に閉じることなく、「みんなでやる」という姿勢でプロジェクトを進めていく文化があります。 実際のプロジェクトにおいても、当事者意識を持って取り組むメンバーと一緒に何度も議論を重ねたことで、自分だけでは気づかなかったアイデアや視点を得ることができました。

このように、挑戦を支える環境や組織のマインドがあったからこそ、新しい役割にも前向きに取り組み、「やり抜く」ことができたのではないかと感じています。

おわりに

PMを経験してみて、エンジニアとしてプロジェクトに携わっていた頃よりも、より広い視点と将来を見据えた視点で、プロジェクトやビジネスのあり方を考えるようになりました。

特に本記事で紹介した3つのこと

  • 「最適解の模索と意思決定」

  • 「関係者との密なコミュニケーション」

  • 「未来視点」

は、今回の経験を通して改めて得た学びであると同時に、職種を問わず重要な点であると感じています。

まだPMとしては新米ですが、今後もこうした学びを大切にしながら、より良い意思決定や価値創出につなげられるよう邁進していきたいと思います。