はじめに
こんにちは、Insight Edgeで営業・コンサルタントを担当している楠です。 普段は主に住友商事グループの事業会社向けのDX案件の企画・推進に携わっております。
今回の記事では、私が参加させていただいた社会人向け研修プログラム「Technology Creatives Program(通称テックリ)」の内容や学びについてご紹介いたします。デザイン思考に関心のある方や、テックリへの参加を検討している方への参考になれば幸いです。
なお、テックリの受講期間は3月までなのですが、本記事の内容は執筆時点(2月中旬)のものとなる点、あらかじめご留意ください。
目次
- はじめに
- Technology Creatives Program(テックリ)とは
- 参加動機・きっかけ
- プログラムの内容・学び
- まとめ
Technology Creatives Program(テックリ)とは
本題に入る前にTechnology Creatives Program(通称:テックリ)の概要について触れておきたいと思います。
テックリは、東京科学大学・多摩美術大学・一橋大学という、日本を代表する三大学が共同で提供する社会人向けの教育プログラムです。Technology Creatives Programという名前の通り、テクノロジー、クリエイティブ、及びビジネスの観点を俯瞰・統合し、これまでになかった製品・サービス開発を通して新たな価値創造を実現する人材を育成することを目的としています。
テックリについて知りたい方は公式HPをご覧ください。
参加動機・きっかけ
弊社はMissionとして「To “Re-design” the world with the power of technology; 技術の力で世界を“Re-design”する」を掲げており、主に住友商事グループ企業のDX化を主軸に、グローバルの多種多様な事業と向き合い、テクノロジーで課題を解決するサポートを行なっています(参考:採用 - Insight Edge)。
私も上記Missionに基づき日々業務にあたる中で、複雑な課題を解決するためには粘り強さと柔軟な思考が不可欠であると感じており、テックリでアート思考やプロトタイピング手法を学ぶことで、日々の業務に活かせるヒントを得たいと考えました。
また、後述の通り、テックリでは他の様々な会社・職種の参加者の方とチームを組んで一緒にワークすることが多いため、異なるバックグラウンドや価値基準を持つ方々と協業して成果を上げる経験や交流の機会が得られると考えました。
加えて、テックリは今年度で3期目となっており、弊社のデザインストラテジストが過去に参加していたことも大きなきっかけの一つです(当該メンバの過去記事はこちら)。
プログラムの内容・学び
テックリは大きく「導入モジュール」「パーパスモジュール」「探索モジュール」「旅立ちモジュール」の4つのモジュールで構成されています。プログラムの内容説明は公式HPに記載がありますが、ここでは自分の経験に基づき、記載のない部分について、私個人の学びと併せて少し補足したいと思います。約半年強のプログラムでの実施内容や学びはとても多く、全てを書ききることは難しいので、少しでも気になった方は是非受講を検討してみてください。
なお、今後実施されるテックリの内容については、最新の情報をご確認ください。また、コンテンツの権利保護に配慮し内容面の詳細な記述は避けています。
導入モジュール
- 概要
- 多摩センター周辺の研修施設にて2日間の合宿形式で、講師の方々による講義やワークを実施。
- ワークでは、自治体職員の方からお題をいただいた上で、多摩センターで活動されている方々(地域住民やボランティアの方など)へのインタビュー及びフィールドワークを実施し、課題解決につながるソリューションのアイデア発想及び提案を行った。
- 印象的だった点・学び
- テックリの採用するアプローチ
ソリューション検討では、インタビューに基づいてエクストリームユーザーのインサイトを抽出した上で、スケッチや段ボールなどでの簡単なプロトタイピングを行うアプローチをとりました。また、作成したプロトタイプを用いて自らスキット(寸劇)を行い、具体的なソリューションイメージの検討やすり合わせを行った点も印象的でした。 - プロトタイプ・スキットの重要性
プロトタイプやスキットは、ソリューションのイメージを端的に伝える手段としてだけではなく、ソリューションについて考えを詰め切れていない部分に気づくための手段としても有効であると感じました。チームメンバでスキットを実施する中で「○○の機能はどうなってるんだっけ?」といった会話が生まれることで、検討できていなかった詳細な項目に気づく場面が何度もありました。
- テックリの採用するアプローチ
パーパスモジュール
- 概要
- テックリ講師陣によるオンライン講義を受講。
- 多摩美術大学にて、博報堂ブランド・イノベーションデザイン様及びARS ELECTRONICA FUTURE LABの小川秀明氏による講義及びワークショップを実施。
- Cooking Slam(調理実習型ワークショップ)を実施。各チームにあらかじめ設定と食材が割り振られた状態でオリジナルの料理を作成した。
- 印象的だった点・学び
- 「写真を撮る際は影が映らないように」
オンライン講義の一つでスケッチのレクチャを受けた際のことです。受講者が事前提出したスケッチの写真に対して講師の先生からフィードバックをいただく場面で私の番になった際、一通りスケッチに関する指導をいただいた後、「写真を撮る際は影が映らないように」というコメントをいただきました。曰く、影に気を取られるとメインである絵の方に集中できなくなってしまうとのこと。また、デザイナーの世界では、ミーティング後にスケッチを共有することがあるそうですが、その際も影や余計なものの映り込みはないようにしているとのことでした。普段から意識されている方にとっては当たり前のことかもしれませんが、私はあまり気にしていない部分だったので、大きな気づきとなりました。別の場面にはなりますが、プロトタイプを作成する際ワークショップの際にも「早く簡単に作ることと雑に作ることは違う」というコメントをいただいており、印象に残っています。プロトタイプは実際の製品とは異なり精巧に作りすぎる必要はないものの、ユーザ検証など一定の目的を達成するために丁寧に作る必要があると感じています。実際の写真。タイトルは「出る杭は打たれる。ただし、出過ぎた杭は打たれない。」 - 調理とプロジェクトの共通性
Cooking Slamでは、限られた食材の中でオリジナルの料理を作成し、設定に沿ったストーリーと併せて発表しました。時間や使える食材が限られている中、チームで協力しながら素早く手を動かして完成品を作る行為は、仕事におけるプロジェクトワークと似ていると感じましたし、後の探索モジュールにも通じる部分がありました(ちなみに、ワークの中では調理中に様々な制約が追加されるのですが、私のチームは途中から包丁の使用を禁止されました…!)。
- 「写真を撮る際は影が映らないように」
探索モジュール
- 概要
- 他の参加者と4名程度のチームを組み、パートナー企業様からのお題に対してプロトタイプ付きのソリューション提案を実施(導入モジュールの長期間版)。プロジェクト期間は約4か月で、この間にユーザ候補者へのインタビューやプロトタイピングを何度も繰り返して実施。最終成果物についてはポスター展示やプレゼンを実施。
- 印象的だった点・学び
- 「問い」の重要性
お題は抽象度の高いものが多く、初めにインタビューを通じて自分たちが想定するユーザや解決したい課題およびHMWQ(テックリでは解決したい課題に対するアプローチ方針をHow Might We Questionと呼ばれる「問い」の形で表現していました)を定義する必要があったのですが、これが相当大変な作業でした。広すぎる・狭すぎる・インサイトを捉えきれていない・テックリのアプローチでの解決が困難(例:医療処置など)など、講師陣のフィードバックを受けながら、インタビュー結果のメモを眺めて何度も検討しました。この部分が詰め切れていないと、必要とされないソリューションや実現不可能なソリューションができてしまうので、やはり「問い」の設定が最も重要な工程であると感じました。 - 「手を動かすこと」の重要性
探索モジュールに限らずテックリ全体を通した最大の学びがこちらになるのですが、情報収集・アイデア発想・ソリューション検討いずれにおいても、頭だけではなく手を動かして素早くプロトタイプを作成することが重要であると感じました。今回、チーム全員が社会人メンバで通常業務と並行して探索モジュールのプロジェクトを進める必要がある中、チームでの話し合いの時間は、どうしても日程調整・タスク整理・役割分担といったプロジェクト管理的なトピックであったり、アイデアを並べて「どれが良いか」を考える議論に割かれがちでした。しかし、インタビューを実施して、テーマや自分たちのソリューションに関する生の声を収集したり、アイデアやユーザ体験の絵を描いたり、実際のモノを作ったりしなければ、自分たちのソリューションに自信を持つことができません。なぜなら「答え」はユーザが持っているからです。私たちのチームは初期にこの「ワナ」にはまり苦労しましたが、終盤ではインタビュー時にプロトタイプを見せるようになり、ユーザから返ってくるフィードバックの質や量が大幅に改善されました。
- 「問い」の重要性
旅立ちモジュール
※3月実施予定につき割愛
まとめ
今回の記事では、私が参加させていただいた社会人向け研修プログラム「Technology Creatives Program(通称テックリ)」の内容や学びについてご紹介いたしました。
体系化された知識というよりは自分自身の経験を通した学びが多かったですが、何某か皆様の参考になりましたら幸いです。自分自身も、今後業務を進める際の糧としていきたいと思います。
プログラム内容が盛りだくさんだったこともあり、書ききれていないことが多数あるのですが、ご興味のある方は是非受講を検討してみてください!