AWS re:Invent 2022 参加レポート その2

目次

はじめに

Insight EdgeでDeveloperをしているMisawaです。Amazon Web Service (AWS)がラスベガスで開催している世界規模の学習型巨大イベント「re:Invent」に2022/11/28-12/1の期間に参加してきました。私は今回が初めての参加で事前にある程度情報を仕入れてから行ったつもりでしたが、そのスケールの大きさに現地でとても戸惑いました。私のように初参加される方の助けになると思いこの記事を書きます。

この記事で主に書くこと

  • re:Inventの特徴
  • イベントを快適に参加するためのTips
  • 参加をおすすめするセッションタイプ
  • 今回参加したセッションの紹介

基本情報

re:Inventは2022/11/28-12/1に開催されたAWSによるクラウドコンピューティングに関する世界規模の「学習型」カンファレンスで、新サービスなど発表される他、現地会場ではさまざまな発表を聴講したり学習型イベントなどに参加できます。

公式 によれば世界中から50,000人以上が参加したとのことです。前回の現地開催は65,000人とのことですので8割程度戻ってきたといった様子です。ちなみに日本からの参加者は1,000人程度と聞いています。それにしても、ひとつの会社のサービスでこの規模のイベントを開催できることがまず驚きですね。

会場

今回のre:Inventではラスベガスにある下記の黄色の6つのホテル(カンファレンスセンター)が会場となっていました。

一見するとホテルは隣同士で簡単に移動できると錯覚しますが、実際には隣同士でも会場となっているホテルはとてつもなく広く15分以上は絶対にかかります。 ホテル内でも目当てのセッション会場にたどり着くのに相当な量歩きますので隣同士のホテルと言っても油断はできません。

ちなみに両端の会場に至っては歩きで行き来しようとすると画像の通り5km弱ありますので1時間程度はかかります。モノレールやシャトルバスでの移動が必須です。現地でのタイムマネージメントに失敗すると悲惨な目に遭います。

また、とにかく移動量が多いので荷物が少ないに越したことはありません。Macbook Pro 13 inchと私物のiPadをリュックに入れて携帯していたのですが、それに加えて水など携帯するととにかく重さで肩・腰にきます。いかに身軽に行動するかが重要です。

食事

食事には困りません。複数の会場で朝・昼が提供されます。そしてMeals会場はえげつないほど広いです。写真では伝わらないかもしれませんが、この奥にまで食事会場が広がっています。

日毎に中華、イタリアン、スペイン・・・と言ったようにジャンルが変わっているようです。ホテル毎に味や提供されているメニューも違うようなので機会があるなら日毎にホテルを変えてみることもお勧めします。ちなみに朝食は基本的に甘いパンしかありませんので、しょっぱいものが食べたい人は注意が必要です。

Meals会場で食べる時間がない方はランチBOXも提供されるので大丈夫です。それを手に持ち次の会場に移動してそこで食べることもできます。

ランチBOXには必ずまるごとりんご1つが入っています。アメリカンですね。

英語

英語はできるに越したことはないです。大きめのセッションであるKeynote等は日本語通訳もあるそうですが、基本的にどのセッションも自らの力で聞き取る他ありません。一方でWorkshopやExpo会場など1対1で話せる機会はそこそこあります。担当の方に頑張って質問すればみなさん快く答えてくれるので心配はいりません。教育型のイベントなので自分から突っ込んでいく勇気さえあればどうにでもなります。

セッション

re:Inventはとにかく大量のセッションがあります。ここでは現地参加する方に特におすすめしたいセッションタイプとそうでないセッションタイプを紹介します。

おすすめセッションタイプ

  • Keynote:AWSのお偉いさんによる基調講演で新規サービスなどが発表されます。始まる前のライブも気分を盛り上げてくれますし、会場内の観客の反応でそのサービスに対する世界の注目度が分かるとても貴重な機会です。
  • Chalk Talk:発表者のプレゼンを聴くだけでなく参加者が質問できるインタラクティブなセッションです。オンラインでの講演はありません。加えて、その場で実際にそのサービスの利用者が思っている疑問、どう使われているかなどが分かるため、筆者的にはとても有意義で一番おすすめしたいセッションです。

おすすめしないセッションタイプ

個人的にはあまり参加をおすすめしないセッションも紹介します。自身の持っている英語力や、参加目的によってもおすすめは変わると思いますので、あくまで個人的にはという前置きをすることご了承ください。

  • Breakout Session:基本的にオンラインで配信されます。現地で聴くメリットはあまりありません。
  • Workshop:現地で30分ほど説明を聴いた後、実際に説明に沿ってAWSに環境を構築するセッションです。自分で手を動かせるという点で他のセッションと異なりますが、構築する環境はCloud Formation化されており瞬時にデプロイされるので、どのような目的でその設定がされているのかなどの意図を汲み取ることは極めて難しいと言えます。一方で英語に自信のある方は会場で、色々質問できるので良いかもしれません。

セッション参加方法

各セッションを聴講するためには基本的に予約が必要になります。よほど慣れた人であればセッションの予約開始日を公式サイトでチェックして予約すると思いますが、おそらく初参加だとそうはいきません。予約はいつの間にか始まっており、大体のセッションの予約が一瞬で埋まっています。今回、私も出遅れ組で主要なセッションは既に予約が終了していました。ただ実はそこで予約ができていなくても大丈夫です。本当に聴きたいセッションはWalk-up(待ち列)が会場に用意されていますので、30分-1時間程度前から待てば大体は入れます。ただ本当に人気のセッションはとにかく長蛇の列になります。立ち見席は用意されていないので時には2時間前から並ぶ覚悟が必要です。一方で特に人気のセッションはREPEATとして追加で公演される場合もありますので、AWS Eventsアプリで随時チェックすることも重要になります。

人気のセッションはこのように行列になります。

次に現地でセッションに参加するためにやっておくと良いことをご紹介します。

現地に行く前にやると良いこと

  1. AWS Eventsアプリをダウンロードしておく
  2. 聴きたいと思ったセッションを片っ端からお気に入り登録

現地で毎日やると良いこと

  1. 前日にAWS Eventsアプリのお気に入りとSession Detailを良く読みセッション内容を吟味
  2. 会場間の位置関係を把握してスケジュールを組み立て

参加セッション

今回私が初参加で参加したセッションは下記の通りです。1回のセッションが60分以上であり会場間の移動も多いということで1人で参加できるセッション数はそこまで多くないことがわかります。自分が聴きたいセッションをいかに狙っていけるかが重要になります。

  • 11/28

    • [Chalk Talk]Data preparation tips for highly accurate time-series forecasts
    • [Chalk Talk]Transforming DevOps with AI
    • [EXPO]企業ブース周り  Severlesspressoほか
    • [Keynote]Monday Night Live with Peter DeSantis
  • 11/29

    • [Keynote]Adam Selipsky Kenote
    • [Workshop]Finding data in a life science data mesh
    • [Leadership Session]Building Modern apps: Architecting for observability & resilience
    • [Leadership Session]Accelerating innovation with serverless on AWS
  • 11/30

    • [Chalk Talk]Domain-driven design and event storming
    • [Chalk Talk]Lambda performance tuning: Best practices and guidance
    • [Chalk Talk]Build event-based microservices with AWS streaming services
    • [Chalk Talk]Choosing the right database(s) for your application
  • 12/01

    • [Keynote]Dr. Werner Vogels Keynote
    • [Breakout Session]Build your application easily & efficiently with severless containers
    • [Breakout Session]Building Serverlesspresso: Creating event-driven architectures

セッション紹介

開発チームで日々システムのアーキテクトやDevOps環境の構築をしていますので、今回のre:Inventでもシステムのデザインパターン・サーバレス・監視を中心に聴講してきました。その中でも興味深かった3本のセッションを紹介します。

[Chalk Talk] Transforming DevOps with AI

DveOpsをAIによって支援し更なる自動化を目指すことを目的としたセッションです。AWSとしてはCodeWhisperer(Github Copilotのような機械学習を利用したコード推薦サービス)、Code Guru Reviewer(機械学習ベースの静的解析ツール。コードをスキャンしクリティカルな問題を検出してくれます)を提供しています。

CodeWhispererはGithub Copilotのようなコードを生成してくれるサービスですが、本セッションではCodePilotを含む類似サービスとの大きな違いはわかりませんでした。ただCodeWhispererは英語のみにしか現時点では対応していないのようなのでサービスのレベルとしては類似サービスからは一段劣っているという印象です。 また他の類似サービスと同様でオフラインでの実行はできませんが、実行環境はVS Codeをはじめとした様々なIDEがサポートされています。質疑によると時期の明言はありませんでしたがNotebookのサポートが計画されているそうです。

とくに参加者からは、コードに埋め込まれたcredentialsのようなmetadata情報のサーバ上での取り扱いや、ソースコードの著作権などに関する質問が多かった印象で、やはりそこを皆さん気にしているのだなというのがわかったのも良い機会でした。

また、昨今は認証情報の漏洩など、セキュリティも良く気にされるポイントの1つですよね。セキュアな管理が求められるmetadata(credentialsなど)がソースコード中に含まれてしまっていた場合に、どのようにサービス上で取り扱っているのかといった質問もありました。こちらについてはあくまでinputとoutputに使われるのみで情報はサーバには保存されないし、もちろんモデルの学習には使われないとの回答でした。このようなサービスは非常に便利でDevOpsのサイクルをさらに改善していくためには今後も必須とは思われる一方で、どのように活用・付き合っていくかはとても難しい問題と改めて実感しました。

[Chalk Talk] Lambda performance tuning: Best practices and guidance

本セッションの内容はこれまではBreakout Sessionでやっていたそうですが、今年はインタラクティブにしたいとのことでChalk Talkでの開催となりました。Principal Developer AdvocateのEric Johnson氏からLambdaのベストプラクティスを聴くことができました。

いくつかチューニングのTipsが紹介されていましたがその中でも、特に気になった2点を紹介します。

1点目はコストとパフォーマンスのバランスの最適化に用いることが可能な AWS Lambda Power Tuning というツールです。私も含め、会場ではあまり知っている人がいないようでした。シビアにコストを最適化するということはなかなか無いかもしれませんが、昨今のインフレーションを考えるとこのようなツールの活用は必須になるかもしれません。

2点目はLambdaを用いたAPI構成です。これまでDynamo DBからデータを取得するAPIを作成する場合API Gateway -> Lambda -> DynamoDBという構成を取ることが多かったのですが、単純なユースケースではLambdaは不要でAPI Gateway -> DynamoDBの構成を取れるというのは目から鱗でした。コールドスタートもなくなりますし、要件を満たすならとてもシンプルな構成で良いですね。 普段から良く使っているサービスですが、使っているが故に考えが凝り固まってしまっていることを再認識させられました。

ちなみにこちらのセッションはChalk Talkというタイプで白板も用意されておりその場で質問に対して絵を描きながら説明してくれたりするので一味違うセッションとして楽しめました。

[EXPO] Severlesspresso

会場ではSeverlesspressoという名でサーバーレスで構築されたカフェ注文システムを体験できました。1日に1,000人程度を捌くことができるというこのシステムはStepFunctionsを活用して構築されています。

会場にいたスタッフの方に質問したところシステム自体は数人で1ヶ月程度で構築したとのことです。 システムの流れとしては、QRコードを撮影しウェブサイトに遷移、ユーザ登録をした後ウェブサイトより注文、注文番号が発行されるので掲示板で出来上がりを待つというシンプルなものです。これらは全てAWSのサーバレス技術を用いて実装されています。私の注文はもちろん、他の人の注文も即座に掲示板に反映されており、とてもスムーズに動いていたように見えました。以下は実際の注文画面です。

ちなみにこのシステムの裏側を[Breakout Session]Building Serverlesspresso: Creating event-driven architecturesでも聴くことができました。身近で動いているサービスの裏側を実際に垣間見られる機会は少ないと思いますが、このように実際に会場で動いているものをその場で裏側も含めて一気に理解できるというのも本イベントならではの経験と感じました。

まとめ

初参加の感想としてはまず「圧倒」されたの一言に尽きます。現地に行ってみて初めてわかる空気感など何もかもが初体験で日々AWSを使った開発をしている身としてはとても刺激的で更なる活力が生まれてくるとても貴重な体験となりました。

先人たちが既に役立つTipsを多数ブログ等に書いてくれていますが、この記事もその一助になることを願っています。ちなみに必要に応じて追記するつもりです。