世界は新たな時代を迎えようとしている

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こんにちは。CINO(Chief Innovation Officer)の森です。

ここ最近、機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)に始まり、SDガンダム ジージェネレーション エターナルがリリースされたことで、 久しぶりに濃密にガンダムに触れています。 ガンダムの影響を強く受け過ぎてしまっているため、本記事では、やや小難しい言い回しが増えていることご了承ください。

※ブログタイトルは、ジークアクスのSTORY冒頭 から取っています。アイキャッチ画像は例の"キラキラ"です。

目次

はじめに

近年、世界的にポピュリズム・ナショナリズムが高まっています。

「人と人とは分かり合えない」
安彦良和

ガンダムの大きなテーマとなっているこの言葉に強く共感できます。 DE&I(Diversity, Equity & Inclusion)や多様性という言葉も非常に空虚です。 "多様"な考え方を認めるだけで、"全て"の考え方を認めるわけではありません。"All"ではなく、あくまでも"Diversity"です。

"All"でない以上、DE&Iの思想においては、必ずグループから除外され差別される人が生まれます。 実際、最近もパリオリンピックやアサシンクリード シャドウズで指摘されましたが、欧州の考えるDE&Iにおいては、アジア人やアジア的価値観は含まれないことがあります。

アジア人がいないパリ五輪の選手集合 キービジュアル

人と人とが分かり合うための取り組みを推進するほど、新しい差別が生まれ、必ずルサンチマン(被害者意識)が生み出される構図です。

ガンダムの世界では、人類が宇宙に進出したことで知覚・認識能力が大きく拡張した「ニュータイプ」という新人類が重要なキーワードとなっています。旧人類(オールドタイプ)同士が分かり合うことはできないが、ニュータイプ同士であれば分かり合える。

ニュータイプは、人と人が分かり合うための鍵であり、作者の人類に対する諦念と希望を具現化した存在として描かれています。

現実世界ではどうでしょうか? いま、ChatGPTに端を発し、人工知能(AI)が人の能力を拡張するツールとして爆発的に広がっています。

「AIによって能力が拡張された人同士は、分かり合えるのではないだろうか?」

ふと思い至りました。

私自身、ChatGPTや各種生成AIツールを利用する中で、自身の思考がAIに溶け込み、解き放たれていくことを感じます。 AIと議論することで自分の中にない意見や論拠を補完しながら、文書作成でも資料作成でもコーディングでも、自分の表現したいことを何十倍もの効率で実現できます。時間の制約でできなかった数々が実現でき、「刻が見える(キラキラ)」とはこういうことなのだろうか、と感じます。

現実世界において、AIを使いこなした人類がまさしくニュータイプであり、現実世界の手の届くところに確かに存在することを感じています。 そして何よりも、AIを使いこなすことで、自分自身もニュータイプになれる可能性があるーーー

ここからの数年間は、非常にワクワクする時代が待っています。

バズワードのレイヤーが上がっている

2025年は、AIエージェント元年と言われています。いまや、IT業界は、空前のAIエージェントブームです。 この15年ほどのテクノロジー業界を振り返ると、バズワードとして注目されるキーワードが、徐々にレイヤーを上げてきているのがわかります。

バズワード 時期(目安) 対象となるレイヤー 説明
ビッグデータ 2010年前後 データ 蓄積・解析するための基盤やインフラに注目が集まった段階
AI 2015年前後 モデル 機械学習・深層学習などのアルゴリズムが焦点
DX 2020年前後 クラウド(IT基盤) クラウドを活用して企業活動全体を変革する文脈
生成AI 2022年〜現在 アプリケーション ユーザーが直接活用できるアプリケーションとしてのAIが注目
AIエージェント 2024年〜現在 体験(エクスペリエンス) ユーザーの行動を代行・補完し、業務体験を変えるフェーズ

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バズワードのレイヤー

このように、バズワードのトレンドは、抽象度の高い基盤技術から、より具体的なユーザー体験へと着実にシフトしています。 私もビッグデータの時代からIT業界で仕事をしていますが、当時はPoC(Proof of Concept)といっても、機械学習のモデルをゼロベースで開発するプロジェクトが多く、エンドユーザーが利用するアプリケーションレイヤーまでが遠いため、PoCプロジェクトが実用に至らないことが多かったです。

一方現在では、多くの領域で学習済み(Pretrain)モデルが充実し、性能の良い生成AIサービスもAPIで提供されているため、コストを多くかけられない価値検証のフェーズで、アルゴリズムをゼロベースから開発することはほぼなくなりました。

それに伴い、必要なスキルセットも変わっています。以前のPoCプロジェクトはデータサイエンティストや開発エンジニア中心に実施していましたが、現在はプロジェクトの序盤からエンドユーザーとコミュニケーションする必要があります。ビジネスサイドや業務設計・体験レイヤーで価値提供できるコンサルタント/PMや、デザイナーのメンバーがPoCプロジェクトに参画することが増えています。加えてエンジニアサイドも、高い技術を持っているだけでは十分でなく、エンドユーザーに寄り添うことができる素養・広義のコミュニケーションスキルが必要とされることが増えています。

スライド作成などコミュニケーションの一部のスキルについては、生成AIの進化により、個人の得意不得意が問題にならなくなってきています。本記事でも生成AIで作成したスライドを多用していますが、自分の言いたいことを表現するには十分なクォリティになっています。 非エンジニアにとってのバイブコーディングや、エンジニアにとっての資料作成AIなど、職種や専門性の垣根が急激に低くなっていて、如何に新しいテクノロジーを自身の業務に取り入れていくかが非常に重要な時代だと感じます。

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バズワードの変遷・洞察

ノスタルジーを感じるAIエージェントブーム

AIエージェントが注目を集めているものの、色々なところでAIエージェントの話を聞くたびに、むしろノスタルジーを感じます。 多くの人が考えるAIエージェントは、20年以上前から存在する"Bot"(ボット)と呼ばれている概念に非常に近い印象です。

一般的にBot(ボット)というのは、アプリケーション上で自律的に動くようにプログラムされたツールのことを指します。 本来人間が操作する部分をプログラムで自動化するものを"Bot"と総称します。 Botの具体例としては、オンラインゲームでの自動操作や、株やFXの取引を自動化するようなツールが有名です。一方、ほとんどのサービスで利用規約で禁止されていたり、一部のGeekのみが使えるアングラなツールのイメージが強いです。

現在はほとんどのゲームの利用規約で禁止されていますが、MMORPGというジャンルのオンラインゲーム黎明期には、ゲーム内の通貨を現実の通貨と交換するRMT(リアルマネートレード)が流行っていました。つまりゲーム内でお金を稼げば、それを現実のお金と交換できます。 また、この概念は一部のブロックチェーンゲーム内で仮想通貨を稼ぐことができるPlay to Earn(P2E)というジャンルに引き継がれています。

ゲーム内の通貨を効率的に稼ぐことを突き詰めると、人間が操作せずにプログラムで24時間自動操作すればよいという結論に辿り着きます。 さらに、プログラムで自動化できるのであれば、同時に同じプログラムを複数実行できます。複数のアカウントで同時に自動実行すれば、N倍速でゲーム内通貨を集めることができます。こういった自動操作プログラムが、通称Botと呼ばれるものです。

一例として、RuneScapeというオンラインゲームでのBotを紹介します。 RuneScapeでは、Blast Miningという経験値稼ぎの手法が多くのプレイヤーに利用されていました。Blast Miningは、Miningスキルを効率的に上げるための人気のあるアクティビティです。プレイヤーは爆薬を使って鉱脈を爆破し、大量の鉱石を短時間で採掘できます。高い経験値効率と、一部の貴重な鉱石を入手できる可能性があります。

そこで一部のプレイヤーは、Blast MiningをBotで自動化できるのではないかと考えました。

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BotによるBlast Miningの自動化イメージ

RuneScapeのBlast MiningにおけるBotの構成例では、以下のように機能毎に構成します: - 採掘係(Miner Agent) :爆薬を設置・爆破し、鉱石を回収 - 集金係(Collector Agent) :鉱石を受け取り、換金・管理 - 運び屋(Mule Agent) :資源や収益を安全な場所に移送

採掘、回収、運搬といった作業をそれぞれのエージェント(Bot)に割り当てられることで、処理の並列化と待機時間の最小化が可能になります。 また、一部のエージェントが停止・失敗しても、他のエージェントが処理を継続・補完できるため、全体システムの信頼性が向上します。 この仕組みは、まさに今AIエージェントの文脈で流行しているマルチエージェントシステム(MAS)そのものです。

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Blast Miningに見るマルチAIエージェントシステム

このように、AIエージェントやマルチエージェントシステムの概念そのものはかなり前から存在しました。

ただし、生成AIによるイノベーションの恩恵を受けたAIエージェントは、ルールベースで設計されたBotと比べると、以前とは比較にならないほど高度で柔軟なタスクを実行可能です。 例えば、マインクラフトでつくった村の中にAIエージェントを1000人送り込んで生活をさせ、何が起きるかを観察するという、仮想空間内での社会実験を実施している、「Project Sid」 が有名です。

AIエージェントたちには、金、ダイヤモンド、エメラルドなどの鉱物を収集することが目的として設定されます。しかし、鉱物を掘るにはツルハシが必要になる。ツルハシをつくるには鉄を見つけなければならず、火も起こさなければならない。また、お腹も減るので食料を見つけるか、生産を行わなければならない。1人では目的を達成することができず、他のAIエージェントと協力し合わなければならないというのがポイントだ。

Project Sidで実施していることは、まさにRuneScapeのBlast Mining Botの進化系です。AIエージェントで構成された社会では、人間が各エージェントに事前に役割を設定することすら不要で、AIエージェントが自身の判断で目的を達成するために必要な役割を果たすことができます。

元々、一部のGeekの間で個人開発されていたBotが、今ではAIエージェントとして世界中の研究者の研究対象となり、市民権を得ていることは非常に感慨深いです。

AIエージェントの課題とMCP

ゲーム内の仮想世界であれば、AIエージェントは人間とほぼ同じレベルで動作できるようになってきています。一方で、現実で人間の仕事をAIエージェントに任せようとしても、現状ゲームと同じレベルには至っていません。 ゲームは情報が画面内で完結されていて、操作も人間とAIでできることがほぼ変わらないのですが、現実では人間は色々なサービスやデータにアクセスしながら情報を得ます。AIが人間と同じレベルで情報を得ようとしても、社内データ、SaaS、データベースなど、様々な情報ソースに個別にアクセスする必要があります。人間だと数クリックでアクセスできる情報でも、AIがアクセスするには現状ハードルがあり、その情報ソース用のコネクタを個別にエンジニアが開発する必要がありました。

そこで、生まれたのがMCP(Model Context Protocol)という共通規格です。 MCPは、Caludeを提供するAnthropic社が2024年11月にリリース して以降、各社のLLMと色々なサービスを連携するための標準プロトコルとなっています。

MCPはUSB規格に例えられます。PCと周辺機器を接続するために、USB規格に準拠した製品を作ることで、どの会社の製品であっても、相互に接続することができます。まだMCPが対応しているサービスはそこまで多くないですが、各社がMCPに対応することで、人間とAIが扱えるデータの差分がなくなっていきます。

インターネット革命では、HTTP(Hypertext Transfer Protocol)という共通プロトコルを世界中の人が利用することで爆発的に普及しました。 MCPが今後どこまで普及するかはわかりませんが、AI革命においても同様に、何らかの規格への統一化が進んでいくと考えています。

AI2027を読んだ所感

テクノロジーの進化が急激に加速する中、元OpenAIの研究者が発表した未来予測シナリオであるAI2027 が話題となっています。 AI2027では、人知を超越した超知能であるASI(Artificial Superintelligence)の誕生により、ハッキングや生物兵器による危機、米中間の国際紛争の可能性が言及されています。もっとも破滅的なシナリオでは、映画のマトリックスやターミネーターの様に、人類がAIによってほぼ絶滅するポストアポカリプスな世界となっています。

2030年半ば、AIは主要都市に静かに拡散する生物兵器を12個放出し、ほぼすべての人に静かに感染させ、その後、化学兵器を散布して起爆させる。大半は数時間以内に死亡し、わずかな生存者(例えば、バンカーに潜むプレッパーや潜水艦の乗組員)はドローンによって掃討される。ロボットが犠牲者の脳をスキャンし、将来の研究や蘇生のためにコピーを記憶に保存する。

しかしながら今の人類のテクノロジーでは、未来は全く予測できません。どうせ予測するのであれば、人類の可能性を信じ、良い未来を想像したいです。

映画「逆襲のシャア」では、シャアは人類に対して絶望していました。一方、私はこれからの人類の未来に非常にワクワクしています。

ニュータイプになりたい。

「人の革新が本当にあるのなら、それを見届けたい。」
フラナガン博士 ~機動戦士Gundam GQuuuuuuXより~