はじめに
こんにちは。Insight Edge(以下IE)でセールスコンサルタントをしている石高です。 この記事では、Insight Edgeが住友商事における生成AI活用促進支援の一環として実施したバイブコーディング研修(生成AI研修)についてご紹介します。
Insight Edgeは技術集団としてこれまで住友商事グループ企業に対して幅広いデジタルソリューションの提供を行ってきましたが、IEの支援領域は技術提供・導入にとどまらず、デザインストラテジストやワークショップデザイナーをはじめとする専門性を持ったメンバーを中心に、戦略策定や文化醸成施策の検討、ビジネス課題の解決支援などにも携わってきています。
本研修は2025年度に住友商事のあるグループ(以下、「当該グループ」)を対象に開催され、研修内容の設計および実施をInsight Edgeが担当しています。
生成AI x 業務効率化を目指す研修設計
住友商事では既に全社横断でCopilotをはじめとした生成AIツールが積極的に利用されており、それに伴う社内研修やワーキンググループの活動が活発に行われているだけではなく、中期経営計画の重要方針「デジタルで磨き、デジタルで稼ぐ」を具現化するための全社戦略「Digital and AI Strategy (DAIS)」が推進されています。https://www.irwebcasting.com/20260527/4/b134e14786/mov/main/index.html
こうした環境の下、当該グループとの企画設計の結果、本研修では、生成AIリテラシーの底上げ及び、生成AI活用による業務効率化を目的に据えました。具体的には、業務での生成AI活用のイメージを持てるようになることや、自身の業務改善を題材に具体的な検討を行い、生成AIを活用して、業務効率化・改善を経験すること等です。
目的実現のため、本研修を通じて参加者が身に付けるべきスキルは以下2点であると考えました。
1. 課題発見(業務理解)
各自が担当する事業環境や業務プロセスを深堀りし、本質的課題の特定ができる
2. 解決具体化(テクノロジー理解)
生成AI技術の特性を正しく理解し、特定された課題に対して実現可能かつ効果的な手段を選択できる
研修全体像
研修は大きく3つのフェーズで実施しました。
フェーズ1:生成AI勉強会(全5回)
生成AIの基本的な利用経験(Copilotを活用した対話形式での利用)があることを前提に、より発展的な活用事例・最新動向を学ぶことを目的としたセミナー形式の勉強会です。IEエンジニアによる事例紹介やハンズオンに加え、住友商事社内で先行して積極活用している社員の方にも登壇いただくことで、参加者にとっても実践のハードルを下げ、生成AI活用のユースケースを身近に感じてもらい、関心を引き出すことができました。
フェーズ2:業務課題探索〜解説会
参加者には事前課題として、各自の業務プロセスおよび抱えている課題の棚卸を行ってもらいました。加えて、各自の課題に対して、それぞれの課題を生成AIで解決するのか、あるいはSaaSサービス等の別手段で解決するのかといった、具体的な解決策の検討にも取り組んでもらっています。その後、IEによる解説会を開催。IEの生成AIエンジニアやデータサイエンティストの目線から、適切な技術選定基準、および解決方法についての解説を行いました。
フェーズ3:Copilot道場・バイブコーディング道場(解決策具体化)
フェーズ2で整理した業務課題と想定される解決方法のアイデアを持ち寄り、生成AIツール(Copilotと周辺サービス群等)を使った課題解決とバイブコーディングによるアプリケーション実装を体験しました。

Why バイブコーディング?
フェーズ3における道場の実施背景および進め方について少し詳細を説明します。IEの経験としても、汎用的な既製品のAIツールだけでは対応しきれない業務課題も存在し、ユーザーが自らの業務に合わせてアプリケーションやツールを個別に開発・調整して解決するケースが出てきます。一方、具体検討を進める上での業務担当者と開発者とのコミュニケーション負荷は大きく、構想段階で描かれる「全自動化」や「完全な自律型思考」といった理想の姿と、現在の技術水準やデータ環境において「現実的に実装可能なスコープ」との間にはギャップが生じがちです。
本道場では、実際にバイブコーディングを体験するプロセスを通じて、生成AIの最前線を肌で感じながら実現性への"勘所"を掴んでもらうことを狙い、プロトタイピング(アイデアのクイックな可視化と仮説検証)という手法を採用しました。
研修の成果
本研修は、実際の業務課題を題材に生成AIを活用するプロセスを自ら体験し、業務への取り入れやすさや効果を確かめることを目的として進めました。研修後、参加者からはアンケートを通じて以下のような声が寄せられました。
- 生成AIありきではなく、まず業務のボトルネックを丁寧に掘り下げ、自身の考えを言語化する能力の大切さを実感した
- 一度で完璧な成果物は出ないが、壁打ちを繰り返すことで精度を高められると感じた
- 計画に時間をかけるよりまず手を動かす方が有効で、「作る→試す→直す」のサイクルを回す姿勢を業務でも続けたい
- 8割まではすぐ作れるが、それ以上の完成度を求めると倍の時間がかかる、という費用対効果の勘所を、手を動かしたからこそ実感できた
- 主要ベンダー各社のツールに実際に触れたことで、各社の得意・不得意やセキュリティ上の制約を感覚的に理解できた
これらの気づきは、本研修を端緒として、今後以下のような力・スキルへと通じていくものと考えています。
【言語化する突破力】
曖昧な理想を形にする「構造的対話スキル」
- 自分の構想やニーズを、相手(AIやエンジニア)に伝わる言葉に落とし込むスキル
- 現場の課題を丁寧に掘り下げ、実際に使う人の目線から本質的な解決策を考えるスキル
- 日常業務の中からAIで改善できそうなポイントを見つけ出し、課題として整理するスキル
意図を正確に伝えるプロンプト制御スキル
- 曖昧な指示をなくし、精度の高いアウトプットを引き出すために具体的に書くスキル
- 一発で完結させようとせず、壁打ちを繰り返しながら少しずつ精度を上げていくスキル
【形にする突破力】
まず作って試す「爆速プロトタイピングスキル」
- 作ったものに執着せず、必要とあればゼロから作り直せる柔軟さとスピード感
- 「作る→試す→直す」のサイクルを素早く回して、仮説の精度をどんどん上げるスキル
- 最初から完璧を目指さず、アイデアをさっさと形にして試してみるスキル
生成AIの特性を見極める設計スキル
- 一定以上の完成度を目指すとコストが急増することを念頭に置き、リターンに見合った落としどころを判断できるスキル
- 余分な機能を削ぎ落とし、本当に必要な価値に絞って作り上げるスキル
- 個別に開発すべきかどうかの判断も含め、既存ツールで代替できる可能性も踏まえた適切な技術選定の感覚
【繋がる突破力】
AIやエンジニアと対等に話せる「共通言語と翻訳スキル」
- 既存の自動化ツールと生成AIを、場面に応じてうまく組み合わせられる構成力
- セキュリティの制約を前提条件として受け入れた上で、安全な使い方を考えられる力
- 主要ベンダー各社のツール特性を自らの手で触って理解し、状況に応じて使い分ける現場感覚
まとめ
生成AIのトレンドは目まぐるしく変わっており、ビジネス部門であっても新しいツールに触れ、「何ができて、何が難しいのか」を自ら試してみることは大切です。今回の研修でもハンズオンの時間を多く設け、まずはツールへの理解を深めてもらいました。
同時に私たちが意識したのは、ツールの習熟を進める中で、「自分の課題を言葉にし、素早く形にし、専門家と対話できる力」も一緒に育んでもらうことです。「実際にツールを動かす手」と「課題を具体化する思考」の双方が組み合わさることで、激しい技術トレンドに左右されず、どのようなツールが登場しても応用が利く本質的なスキルになると考えています。
また、今回はIEのメンバーが一体となって企画から運営まで携わりました。特に技術面で深い知見を持つエンジニアやデータサイエンティストが関わることで、参加者が持ち寄った業務課題に対し、実務に直結した技術的なフィードバックを届けることができたと感じています。本稿で解説した「3つの突破力」は、技術とビジネスの現場が交わるこの研修を通じてInsight Edgeなりに言語化したものです。
Insight Edgeには、エンジニアやコンサルタント、ワークショップデザイナーなど、多様なプロフェッショナルが在籍しています。総合商社が持つ広大なビジネスフィールドを舞台に、テクノロジーを通じて新たな価値を創出することに興味がある方は、ぜひカジュアル面談からお気軽にお問い合わせください。