自分のPM経験を振り返ったら、AIに置き換えられそうで凹んだ話

はじめに

こんにちは、InsightEdgeのPMの中村です。先日、ある案件の説明資料を作成しようと、盛り込みたい内容を箇条書きにして生成AIに入力してみました。すると5分ほどで、決定事項・宿題・担当者・期限まで整理された形にまとまって出てきました。率直に言って、筆者が自分で作るより読みやすい仕上がりでした。似たような経験をお持ちの方は、多いのではないでしょうか。

本記事では、この体験を入り口に、生成AI時代のPM(プロジェクトマネージャー)の仕事がどう変わっていくのかを、現役PMの視点から考えてみたいと思います。

第1章 実は「雑務」こそがPMの武器だったのではないか

AIが普及した今、「議事録や進捗集計はAIに任せ、PMは本質的な業務に集中すべき」という主張は広く語られており、私も基本的には同意見です。

ただ一方で、PMの影響力は実はその雑務から生まれていたのではないか、とも感じています。たとえば議事録に「やります」と書かれていても、それが前向きな「やります」なのか、渋々の「やります」なのかは、文字面だけでは判断できません。AIの文字起こしで「やります」という結論が正確に残っていても、発言者の温度感までは見えないのです。

また、議事をまとめる際には、多少の解釈で行間を補ったうえで発行し、それをもって関係者全員の合意を取る——現場では、そうした進め方が機能してきた面もあると思います。雑務は面倒な作業であると同時に、こうしたニュアンスも含めて情報が最も集まる特等席でもあったのです。

これらをAIに委ねれば、透明性は高まります。それ自体は歓迎すべきことです。ただ、プロジェクトを運営するうえでの強みは失われます。雑務から解放されて身軽になったつもりが、武器も一緒に手放していた——導入の際には、この点を自覚しておく必要があると考えています。


第2章 AIは情報を「作りすぎる」

「AIで時間が浮けば、本質的な思考に充てられる」。これも魅力的な話ですが、一概にそうとは言えない面があると筆者は考えています。

生成AIは、依頼した以上に関連資料や文脈を補い、大量の情報を提示してくれます。それ自体はAIの強みですが、判断に必要な水準を超えた情報が積み上がり、かえって意思決定が重くなる懸念もあります。せっかく浮いた時間が、増えた情報をさばく時間に置き換わってしまっては本末転倒です。

AI時代のPMには、出力された情報を盲信するのではなく、以下の2つのアプローチが重要になると感じています。

  • 情報の引き算: AIが「作りすぎた」ノイズを削ぎ落とし、本質だけを残す
  • コンテキストの付与: AIには見えていない「現場のコンテキスト(文脈)」を人間が補足する

AIの出力を「どこまで使い、どこから捨てるか」を見極める力(情報の編集力)が、これまで以上に問われるようになるでしょう。


第3章 「よくできた資料」は、もう褒め言葉にならない

生成AIを使えば、体裁の整った計画書を短時間で作成できます。その結果起きるのは、「よくできた資料」の価値の低下です。

正直に申し上げると、筆者は資料作成が得意ではありません。ですので、AIが整った資料を作ってくれること自体には大賛成です。

ただ、そもそも資料の目的は「相手に伝わりやすくすること」にあります。第2章で述べたとおり、AIには情報を作りすぎる傾向がありますから、資料においても過剰な情報は不要ですし、本来の趣旨から外れた内容が紛れ込んではいけません。資料作成が楽になった分、「余計なものが入っていないか」を見極めるという新たなチェックポイントが増えた、と捉えるべきだと考えています。


第4章 あらためて、AI時代のPMの仕事とは

ここまでの話を整理すると、進捗集計や資料の骨子作成、機械的なファシリテーションといった「定型的な管理業務」としてのPMの仕事は、近い将来AIに完全に置き換えられていく(=なくなる)と予測されます。しかし、これは悲観すべきことではなく、むしろ歓迎すべき変化だと捉えています。資料作成や調整業務から解放されること自体は、望ましいことだからです。

では、人間のPMには何が残るのでしょうか。筆者は、以下の2つのコア領域こそが、これからのPMの存在価値になると考えています。

  1. 感情の機微を汲み取った「合意形成」と「意思決定」(第1章・第2章で触れた、AIには見えない行間やコンテキストを補う領域)
  2. 「PMエージェントAI」をプロジェクトごとにカスタマイズ・最適化する役割(新たな技術を現場の武器として乗りこなす領域)

仕事とは、社会から求められることに対して対価をいただき、貢献することです。そうであるならば、従来型のプロジェクトマネジメントスキルそのものは不要になるかもしれません。しかし、変化を恐れるのではなく、次のロールを見据えて動き始めること。

私たち Insight Edge では、こうした生成AIをはじめとする先端技術を社会やビジネスの現場に正しく届ける(DX)営みを日々行っています。たまたま現時点でその技術が生成AIであり、筆者のロールがPMであるに過ぎません。そして、その両方はこれから大きく変わっていく可能性があります。

AIの資料作成力に驚かされた経験は、同時に次の役割を考えるきっかけを与えてくれたのだと思っています。